武蔵野プレイス視察(図書館・複合施設検討のため)
- 慧 務川
- 2023年12月26日
- 読了時間: 6分
私も小学校以来利用している図書館相武台分館の未来や、母校もえぎ台小学校跡地活用の将来像を検討するため、図書館・複合施設の先駆的事例である「武蔵野プレイス」に視察にいってきました。
9月定例会での一般質問や活動レポートで申し上げているとおり、
私は
・もえぎ小跡地に相武台分館の図書機能を移転する
・図書機能の他、こどもの居場所やカフェテリアなど全世代がコミュニティスペースとして利用できる複合施設として活用する
ことを目指しています。
そのためのヒント、実現するにあたってヒントとなる様々な工夫が武蔵野プレイスにありました。
視察概要をこのブログにも記録しておきます。
【視察の目的】
相模原市の公共事業再編に伴う複合施設の設置に向け、先進事例である複合施設武蔵野プレイスを視察し、事業が効果的なものとなるための理念や開発、指定管理者の選考、施設機能の工夫などについて確認をした。
以下では、武蔵野市とのやり取りで、当職が特に注目した事項をまとめた。
<前提となる市の状況・環境>
・人口は増化しており、公共施設需要が低下していることはない。
・図書機能は市内の3つの駅(三鷹駅、吉祥寺駅、武蔵境駅)周辺に配置する発想で整備を進めた。
・市の面積が低いため公共施設集約と親和性が高い。
・市内に自治会が存在せず(昭和の時代に解消)、学校区単位で青少年協議会や社会福祉協議会などの地域コミュニティが存在しているものの、コミュニティ希薄化が進行しており、人が集うコミュニティーセンターが必要であった。
<設立までの経緯>
・立地場所は元々、農水省の食糧倉庫であり、市から払い下げ要望をして取得。
・武蔵野プレイスのコンセプトは、市民対象のアイディアコンペを実施の上、施設基本計画策定委員会において決定。その後、具体的な設計プロポーザルを公募で実施した。
・図書館機能の在り方については、例えば飲食スペースの確保など、当時の図書館では禁止事項であったことを許容するなど、機能面の規制を緩和する方針とした。方針の議論の際は、純粋な図書館専門家だけでなく、建築の有識者、緑化の有識者など、図書機能の専門家とは異なるメンバーも集め、「人が居心地よくなる場所」を設計することに重点を置いて議論を進めた。
<目指したコンセプト・設計>
・「目的がなくても来てもらえる場所」をコンセプトとして施設を設計した。そのために、「気を引くデザイン」を重視、「各階の中央に広場的スペース確保し、居心地の良さを提供」、「ガラス張りのエレベーターや吹き抜けを各所に設置するなど、他階層から別の階が自然と視界に入りる「空間ブラウジング」」を重視、施設入口にカフェを設置するなどの工夫を凝らした。
↑武蔵野プレイスには「図書館」「生涯学習支援」「市民活動支援」「青少年活動支援」のそれぞれの機能を各階層に分けている。
<施設管理・運営状況>
・施設の利用状況は年間144万人で14万人の住民数に対して10倍規模。他の図書機能施設と比較して顕著な実績。
・市財政が厳しいとは言え、「図書館」「生涯学習支援」「市民活動支援」「青少年活動支援」の公的機能を持つ武蔵野プレイスの予算をこれまで縮減することはせず、公的機能維持を重視した「採算度返し」の運営を続けている。
・指定管理料は経費実績に基づく「清算方式」で決めている。
・指定管理者の選考は非公募とした。これは、武蔵野市が数多く事業団を有しており、図書館管理や公民学習支援などのノウハウを有していたこと、市政方針を確実に反映させたいこと、市の休館対応にも柔軟に対応させたいことなどを理由としている。
・結果として、指定管理者は武蔵野文化生涯学習事業団が開設以降継続して担っている。
・なお、武蔵野プレイス内の「パフォーマンススタジオ」などの管理運営については民間ノウハウを得るため、市から民間企業へ2~3年間派遣をしている。
<施設内の特徴的な機能>
・駅周辺に位置しているため、開館時間を深夜帯(22時まで)まで延ばしている。これにより、若者の利用者増、全体的な施設利用者増を実現している。
・中高生などの若年層の居場所を確保するため、
学習センター、ティーンズスタジオ、卓球場、サウンドスタジオ、クラフトスタジオなどの中高生向けの空間を設けている。これらの機能はすべて地下フロアに設けてあり、「楽しい隠れ家・秘密基地」のようなデザイン、設計としてある。
↑地下2階「ティーンエイジフロア」は中高生等の利用フロア。照明を暖色としており、隠れ家、秘密基地のような空間づくりに成功している。写真同フロア内の情報交換掲示版。掲示板裏は学生で満席のラウンジとなっている。
・ボルタリング用の壁を用意したが、利用者は少ない。同じ部屋に卓球台を設置しており、そちらの利用者は多い。
・パフォーマンススタジオ、サウンドスタジオもダンスや軽音楽を中心に若者に人気で利用者が多い。
・クラフトスタジオ(調理室)は稼働率低く、会議室利用に使われることが多いことが課題。
・司書を豊富に雇用しており、レファレンスサービスのほか、テーマ別推薦図書ブースなど図書展示の企画を実施している。
↑地下2階の若者フロアの図書展示
↑地下1階のメイン図書フロアの展示
↑地下2階の「ティーンエイジフロア」と地下1階の「メインライブラリー」をつなぐ階段。新規性のあるらせん状階段をデザインすることで「楽しい」「隠れ家」「テーマパーク」のような空間を演出している。
↑地下1階の「メインライブラリー」も暖色系の照明を使用。1階から地下の図書室の様子を眺めることができる。このように「他のフロアから別のフロアを視認できることで、他のフロアへの関心を誘う『導線ブラウジング』」の機能を施設全体に持たせている。
↑無人自動貸し出し機は全て1階に集約しており、職員による貸出作業はなく、業務負担の低減につながっている。
↑1階入り口よりすぐ左手には、雑誌・新聞コーナーが設けられており、用意されている種類が非常に豊富。「採算度外視」で予算をかけ、多様な雑誌、新聞を用意しているとのこと。
↑1階無人貸し出し機の裏側にはカフェテリアが設けられている。
・2階は「コミュニケーションライブラリー」。フロア全体に児童書が蔵書されている。またお話会を実施するボランティアスペースや授乳室などもあり、子育て世帯が利用するための専用フロアになっている。こどもが声を出して図書を楽しんでもよいように児童用フロアは2階で専用しており、他のフロアと分けている。
↑3階の「ワークラウンジ」には学習用机が50席。当初の想定よりも利用者が2倍あったため、席数増が課題とのこと。
↑4階「ワークテラス」には大会議室がある。
↑4階には、その他、ワーキングデスクブースを設けており、テレワークが可能。(オンライン会議機能がないことが課題とのこと)
↑4階最上階にはテラスを設けており、街を展望しながら図書等を嗜むことができる。
<施設内カフェ事業者について>
複合施設にカフェテリアを導入することは、全世代の利用者増を目指す仕掛けとして昨今では必須ともいえる要素となっている。
武蔵野プレイスではどのような経緯でカフェテリア導入を成功させたのか、聞き取った結果概要を記す。
・カフェ事業者の参入は収益性が見込めるかどうかに左右される。市はカフェスペースを事業者に貸し出すことで、賃料を得ている。その分、事業者は賃料以上の売上を出すことが必要。
・採算を重視した大手事業者は軒並み参入辞退した。
・事業者探しに難航していたところ、市内のベンチャー企業がコーヒー店出店を希望しており、地域貢献・ボランティア意識で参入してもらった。
・当初から事業者の撤退や変更はされていない。駅に近いこともあり、利用者は一定数確保できている模様。
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